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バックナンバー【今月のトピック】

2010年9月度(2010/11/30発行) 銀行貸出残高と人口の推移


 先般日銀が発表した貸出先別貸出金の統計によると、本年9月末の銀行貸出残高は410兆円で11ヶ月連続の前年割れとなった。デフレ環境下での資金需要の低迷に頭を悩ます金融機関関係者も多いことと思われるが、この貸出残高の動きをもう少し細かく見ると、貸出残高の低迷が必ずしも日本全国一律の事象ではないことがわかる。

 図は、直近10年間の銀行貸出残高の増減率、及び人口増減率を都道府県別にそれぞれ年率換算して図示したものである。貸出金増減率の上位には、愛媛県、次いで沖縄県、滋賀県、静岡県、鹿児島県が順にランクインしている。10年間を通じて貸出残高が年率1%以上伸びたのはこの5県だけであり、この間の全国平均が1.03%のマイナスであるのと比較しても高い伸びであることがわかる。また、残高全体の4割を占める東京都は0.96%のマイナス、そして減少率最大は大阪府の3.39%であった。大阪府では10年間で実に15兆円以上の貸出金が減った計算になる。
 一方、中長期的な貸出残高全体のパイを決定する要素の一つに人口の動きが挙げられるが、47都道府県のうち2000年から2009年にかけて人口が増えたのは、東京都、神奈川県などを含む12都県に留まる。先に残高伸び率上位の5県を掲げたが、このうち沖縄県、滋賀県、静岡県の3県は人口増加県である。これに対して残高伸び率トップの愛媛県や、第5位の鹿児島県については、人口の伸び率では下位1/3に含まれ、パイが縮小する中で高い貸出金の伸びを実現しているのがわかる。人口の減少は資金需要のパイに深刻な影響を伴うことから、とりわけ地方経済に地盤を置く地域金融機関にとって喫緊の課題となるが、先んじてこれに対応し結果を残している愛媛県、鹿児島県の動きは注目に値しよう。

 (尾藤 剛)

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