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バックナンバー【今月のトピック】

2010年10月度(2011/1/4発行) 「破綻予備軍」のその後の動き


 2010年10月期のRDB企業デフォルト率は2.50%となり、2009年3月を一つのピークとするデフォルト率の改善基調は、1年半以上も継続している。この2.5%という水準は、2000年代前半の金融危機当時と比較して、必ずしも低い数値ではないが、当時と比較して大幅に改善しているのが、デフォルト定義から「破綻懸念先」を除いた、「実質破綻先(以下)」+3ヶ月以上延滞先によって計測したデフォルト率である。
 図では、通常のRDB企業デフォルト率のほか、上記の実質破綻先基準のデフォルト率を示している。実質破綻先基準の数値は1.63%となり、既に「平時」の水準にまで下がってきているが、こうした銀行の裁量余地のより小さい定義によるデフォルト率が十分に下がっていることは、国内経済にとっては一つ明るい話題であり、また政策対応が一定の成果を挙げた結果とも言えよう。
 一方で過去最大の水準に高まったのが、両者のデフォルト率の乖離、すなわち、事業は継続し返済も続いているが、銀行によって「破綻懸念先」に認定された債務者の割合である。直近の数値0.87%は過去のピークを大きく上回っており、特に昨年秋以降この乖離の拡大が顕著となっている。両者の乖離とは、「今は大丈夫だが、将来は延滞や破綻の可能性がある」と銀行が判断した、いわば「破綻予備軍」の動きに他ならない。金融円滑化法導入から1年が経過し、各銀行では債務者企業における経営改善計画の進捗フォローが今後本格化すると、こうした「破綻予備軍」は更に膨らむ可能性がある。これは直接的には企業デフォルト率の押し上げ要因となるほか、一定のタイムラグをおいて倒産件数等にも波及することが予想され、動向には注目を要する。

(尾藤 剛)

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