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バックナンバー【今月のトピック】

2010年6月度(2010/8/31発行) 進む「貸出先企業の」少子高齢化


 デフレ脱却に向けた政策論が活発に交わされる中、潜在成長率低下の元凶としてしばしば槍玉に挙げられるのが、世界的に見ても、更には歴史的に見ても類例の無いペースで進む、わが国の少子高齢化問題である。内需の最終的な担い手たる消費者の高齢化、更には少子化を通じた人口そのものの減少が、慢性的な需要不足の原因となり、長引くデフレを深刻化させているという説は相応に説得力を有するものと見られる。

 少子高齢化問題は人口に限ったことではない。図は、2000年度以降で継続的なデータ集計が可能な邦銀について、貸出先企業の業歴分布を示した「箱ひげ図」である。「箱」の下端は25%点、中央が50%点(中央値)、上端が75%点を、「ひげ」の下端は5%点、上端は95%点をそれぞれ表している。数値は中央値を表しており、例えば2000年時点の貸出先全体における業歴の中央値21.2年に対して、2009年時点ではこれが23.3年に伸びている。弊社データベースのデータ収集ルールの特性上、一定の抽出誤差は含まれるが、10年間の傾向で見ると、銀行貸出先企業の「高齢化」も着実に進んでいるのがわかる。

 貸出先企業の高齢化は、銀行にとって慢性的な貸出先不足の原因そのものである。貸出先の若返りのためには、業歴の浅い企業に対する銀行側の貸出スキルの向上、新たな商品開発が必要なのは当然だが、より根本的には、国内企業全体における起業率の改善、すなわち企業の「少子化」に社会全体として歯止めをかけることが必要だ。子供が「社会の宝」ならば、さしずめ起業家は「経済の宝」である。これを積極的に育成・支援する取り組みは、デフレ脱却に向けた長期的な施策として特に有効であろう。

(尾藤 剛)

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