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バックナンバー【今月のトピック】

2009年10月度(2010/1/4発行) 残高の動向が注目される「緊急保証制度」


昨年秋以降に実施された政府の経済対策の一つに、信用保証協会による緊急保証制度がある。この信用保証協会とは、中小企業が銀行から融資を受ける際に、手数料と引き換えに借入の保証人となる公的機関である。万一の際に借入の一定割合を協会が銀行に返済するため(代位弁済)、銀行は貸倒のリスクを軽減できることから、結果として中小企業は融資を受けやすくなる。緊急保証制度とは、この信用保証協会による保証の上限額を期限付きで大幅に引き上げ、また代位弁済時の返済割合も100%とするもので、2011年3月までの時限措置として実施されている。なお、この仕組みは信用保険制度を通じて、最終的には国や地方自治体が損失負担することになる。

1998年後半、今回と同様に総額30兆円規模の保証枠を政府が用意した「金融安定化特別保証制度」により、大幅に保証残高が伸びた時期があった。当時の代位弁済率(保証件数に対する1年間の代位弁済件数の割合)の動きを見ると、保証残高の急増とともに一旦低下したものの、保証残高がピークをつけた1999年12月を底に反転、以降3年以上にわたり上昇を続けた。当時の動きは、こうした資金繰り対策があくまで「カンフル剤」に過ぎず、その後の景気回復がなければ、かえって逆バネとして作用しかねないことを物語っている。
直近では代位弁済率も3ヶ月連続で横ばいとなり、頭打ち傾向が見えてきた。しかしながら、今回の緊急保証制度も本質的には「カンフル剤」であり、効果が切れれば代位弁済率は再び上昇に転ずる可能性も否定できない。そして、代位弁済の増加は基本的にはデフォルト率の押し上げ要因となりうる。緊急保証制度の期限は2011年3月だが、巷間言われる景気二番底の可能性を探る上でも、保証残高、代位弁済の動向には当面注目が必要であろう。

(尾藤 剛)

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