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バックナンバー【今月のトピック】

2009年7月度(2009/9/30発行) モラトリアムのインパクト


RDB企業デフォルト率の算出においては、元利払いが3ヶ月以上滞った企業、もしくは銀行が資産査定にて破綻懸念先以下に認定した企業を「デフォルト先(債務不履行先)」と定義し、銀行貸出先全体における直近1年間の発生割合をもってこれを集計している(以下「広義の」デフォルト率という)。従ってここには、法的な破綻には至っていないものの、借入の返済遅延や、財務状態の顕著な悪化などを抱えた、いわば「倒産一歩手前」の企業についてもデフォルト先に含んでいる。

これに対して、もう一歩進んで実際に倒産に至った企業、正確には税法上、銀行の貸倒として認められた企業だけに対象を限定した「狭義の」デフォルト率を算出すると、直近2009年7月の広義のデフォルト率3.34%に対して、狭義のデフォルト率は2.30%となっている。この中には、延滞等をきっかけに最終的な法的破綻に至った企業も含まれているものの、総じて言うならば、この狭義のデフォルト先と広義のデフォルト先との間に属するのが、純粋な「倒産一歩手前」の企業群ということになる。

さて、昨今話題の「モラトリアム(支払猶予)」である。これは「倒産一歩手前」の企業群に借入の返済を一定期間猶予し、最終的な破綻に進むのを抑える措置に他ならない。現状の企業の返済状況を前提とすれば、「広義」と「狭義」のデフォルト先の差、つまり貸出先全体の約1%が対象と試算される。

直接的には全体の1%の企業が一息つける一方で、支払猶予期間中の金利負担、借り手側のモラルハザードなど、有形無形のコストの問題をクリアする必要がある。また方法によっては、銀行にとって貸出業務へのインセンティブを喪失する事態にもなりかねない。国民経済全体の便益とコストのバランスを大局的に考慮した冷静な議論が望まれる。

(尾藤 剛)

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