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バックナンバー【今月のトピック】

2012年6月度(2012/8/31発行) 地方銀行が国内貸出の主役になる日


 昨今、日本の大手行が海外部門の強化に注力するニュースがとみに増えてきたように思える。特に、サブプライムローン問題、リーマンショック、欧州のソブリン債務問題と、欧米の大手金融機関の経営を揺るがす事態が連続する中、国際金融市場における邦銀の存在感は相対的に増しており、その拡大戦略にとって絶好のチャンスが訪れているのは間違いない。

 こうした「海外シフト」の裏側で進行している事態の一つが、大手行の国内貸出の縮小である。図は大手行(統計上は都市銀行)と地方銀行の国内貸出残高を貸出先別に示したものだが、2012年6月末の都市銀行全体の国内貸出残高167兆円は、同じ基準で比較可能な1999年以降で最低の水準にとどまる。13年間の減少額44兆円の主たる要因は、47兆円も減少した法人向け貸出である。逆に地方銀行の貸出は着実に増えており、直近の残高は過去最高水準の160兆円、この間の増加額は26兆円に達する。特に個人向け貸出が19兆円も増えたのが目立つが、法人向けも13年前とほぼ変わらぬ残高を維持しており、今や国内の貸出市場では、法人向け、個人向けのいずれにおいても、大手行から主役の座を奪い取ろうとしている。

 国内の貸出市場は慢性的な資金需要不足が言われて久しく、とりわけ競争が激しく利ザヤも小さいとされる法人向け貸出が、地方銀行にとって「伸びている」との実感を得がたい市場であることは想像に難くないが、少なくともここ10年程度を見渡して「減っていない」という事実を軽視すべきではなかろう。ここへ来て、大手行の海外シフトという構造変化が加速しており、地方銀行にとっては国内市場にもまだまだ伸びしろがあるとの意識があってもよいのではないか。

(尾藤 剛)

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