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バックナンバー【今月のトピック】

2012年7月度(2012/9/28発行) 円滑な貸出慣行の再構築に立ちはだかる「破綻懸念先」


 2008年9月のリーマンショック以降も、邦銀の信用コストは比較的低い水準を維持しており、ここ数年来、信用リスクの高まりを意識される海外の金融機関に比べると、邦銀の信用力の安定感が相対的に目立つものとなっている。

 図は、デフォルト時点での債務者区分と延滞状況によってデフォルト先を分けた場合の、RDB企業デフォルト率の内訳を示している。ここでは、内訳をより細かく見るために、要管理先基準でのデフォルト率を用いているが、これによると、デフォルト先の半数は「3ヶ月以上の延滞が発生する前の破綻懸念先」で占められているのがわかる。このうちには、3ヶ月未満の延滞が発生しているケースが相当数含まれる可能性はあるものの、少なくともこの時点では、ここでいうデフォルト先は、国際基準におけるデフォルト定義の一つ「90日以上の延滞」の要件は満たしていない可能性が高い。

 さて、国際基準に比して相対的に厳しい面もある国内規制の下では、銀行は、これらのいわば「危険度が相対的に低い」貸出先についても、破綻懸念先と位置付け、既に延滞が3ヶ月以上にのぼる先に対するのと同水準の引当金を計上する必要がある。これまでの国内における資産査定厳格化の歴史が、邦銀における予防的な引当慣行を定着させ、冒頭に示した高い信用力を裏付ける一因となっていることを否定はしないが、一方で、過度に厳しい規制が銀行の貸出意欲を減退させている可能性も無しとはしない。「破綻懸念先」が登場して既に10年以上が経過する中、その役割をあらためて検証することは、邦銀における円滑な貸出慣行を再構築するためにも、極めて意義深いものとなるのではなかろうか。

(尾藤 剛)

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