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2012年1月度(2012/3/30発行) デフォルト率とランクアップ率
2月28日のエルピーダメモリによる会社更生法の申請は、公的資金の注入を受けた企業の経営破綻として新聞等で大きく報じられた。一般に会社更生法の申請は、債務の履行条件の変更を伴うことから、銀行にとっては「デフォルト事象」として扱われるが、後に会社が「更生」を果たすと、今度は逆に「デフォルト先」から「正常先」へと復帰したものとして扱われる。
「ランクアップ」「正常化」などと称するこうした事象は本来、貸出先が「更生」を果たして初めて認定されるべき事象である。一方で、銀行におけるデフォルトの認定基準は、金融当局所定のルールに基づいており、このルールが変わると、元々デフォルト先だったものがその定義から外れる、すなわち貸出先の更生度合いや景気動向とは無関係にランクアップが発生することがある。図は、RDB企業デフォルト率と、同じ時期のランクアップ率(ここでは集計の便宜上、直前の3年間で要管理先以下に認定された貸出先のうち、期末時点で要注意先以上に復帰した先の件数割合を集計した)を示したものだが、これによると、2008年3月期までは概ね4%前後で推移していたランクアップ率が、2009年3月期に突如12%近くにまで跳ね上がり、翌年以降も引き続き高水準にあるのがわかる。
デフォルト率がピークを迎えたのと同じタイミングでのランクアップ率の急上昇、この背景には、2008年11月に金融庁が公表した「中小企業向け融資の貸出条件緩和が円滑に行われるための措置」、すなわちデフォルト認定基準の事実上の緩和措置があるのは間違いない。このときのランクアップ先が、危機を乗り越えて真の「更生」を果たしているのであれば、一連の「金融円滑化」政策は成果を上げたものとして高く評価できるのだが、実態はいかがであろうか。
(尾藤 剛)
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