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バックナンバー【今月のトピック】

2011年12月度(2012/2/29発行) 債務超過先とデフォルト率


 東京電力の国有化の是非を巡り、巨額の賠償金に対する同社の支払能力が議論を呼んでいる。この支払能力の有無を判断する上で一つの目安となるのが、「債務超過」なのか「資産超過」なのかという、同社の財務状態の見方である。一般に、企業の全財産を表す「資産」を、対外的な支払義務である「負債」が上回る状態を「債務超過」と呼ぶが、これは、企業の株主にとっては持ち分がゼロになり、他の債権者にとっては自らの債権が毀損する可能性があることを示す。

 債務超過は、直ちに経営破綻や法的整理を意味するわけではないため、とりわけ中小・零細企業においては、債務超過でありながら長年経営を続けているケースも珍しくない。しかしながら、外から見れば「破綻予備軍」のシグナルであることは明白であり、通常は、新たな借入が困難になって資金繰りに行き詰まるのが債務超過企業の末路である。右図は、債務超過先と資産超過先(=債務超過ではない先)との2つのグループに分けて、それぞれのデフォルト率を表したものである。債務超過先のデフォルト率は資産超過先の約6倍となっているが、これは、債務超過先を「破綻懸念先」「実質破綻先」などと認定する、銀行の予防的なリスク管理の姿勢の表れといえよう。

 一方で、債務超過先のデフォルト率が「たったの」6%しかないことに驚く向きもあろう。これには、債務超過であっても信用供与を受けられる「公的保証」の存在が大きく寄与している。そして昨年、債務超過先のデフォルト率が急低下しているが、これが「金融円滑化法」を通じて中小・零細企業を「ランクアップ」させた一つの結果である。これは言い換えると、目下の「正常先」に多くの債務超過先、すなわち「破綻予備軍」が含まれていることを意味する。

(尾藤 剛)

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