バックナンバー【今月のトピック】
2011年11月度(2012/1/31発行) 「地の利」を失いつつある地方都市の飲食店
去る2011年は、大震災によって歴史に刻みこまれた衝撃的な一年であったが、国内経済の状況、とりわけ本欄が注目する中小企業のデフォルト動向からすると、年間を通じて緩やかにデフォルト率が低下を続けた「平穏な」一年として振り返られ、開示する6つの業種区分のいずれも、水準に違いこそあれ、年間を通して低下ないし横ばい局面にあった。
しかしながら、弊社が内部的に集計対象とする、より詳細な業種区分で見ると、ほとんど唯一、デフォルト率が直近で明確に上昇している業種が存在する。図は、飲食業(公表区分「小売・飲食業」の一部)のデフォルト率の推移を、全体の集計値と比較したものである。目下のデフォルト率のピークである2009年3月以降、全業種での数値が低下を続ける中(灰・破線)、飲食業では、2010年9月の3.3%をボトムに、2011年11月では4%弱まで上昇している(黒・破線)。さらに、飲食業の中でも三大都市圏の数値が横ばいで推移しているのに対して(灰・実線)、地方圏では2010年後半から着実に上昇し、直近では2009年春の水準を上回っている(黒・実線)。
飲食業とは従来、開業率が高く、地域密着型の商売に向いた「地の利」の生きるビジネスとされており、地方都市のいわゆる「シャッター通り」にあっても、元気な姿を見せる店舗がこれまでは多く見られた。しかしながら、2009年ごろから激化した「牛丼戦争」「ワンコイン居酒屋」に代表される大手系列店の低価格戦略と、積極的な地方展開は、地方の飲食業界においても本格的な競争激化が始まる契機となった可能性があろう。昨今の地方圏の飲食業におけるデフォルト率の上昇には、従来の「地の利」すら失われようとしている地方の中小・零細企業の現実をあらためて考えさせられる。
(尾藤 剛)
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