バックナンバー【今月のトピック】
2011年10月度(2011/12/29発行) 改正貸金業法と消えた6兆円
最近、街でポケットティッシュを受け取る機会がめっきり減った。冬には必ず一度は風邪をひく身にとって、ささやかながらも新たな出費の増加である。かつて、ポケットティッシュを宣伝媒体として圧倒的な存在感を示していたのが消費者金融業界だが、2006年ごろから急増した過払金返還請求と、段階的に施行された改正貸金業法によって環境は激変、中小から大手に至るまで、業界の存亡そのものが危ぶまれるほどの苦境にあるのは周知のとおりである。
消費者金融業態による貸出は、8兆5千億円(2007/4)から、2兆6千億円(2011/10)へと、5年足らずで6兆円も急減している。グレーゾーン金利の撤廃による金利上限の設定、そして借り手の収入に応じて金額に上限を課す総量規制の導入が残高急減の背景とされるが、いずれも資金の供給側の話であり、消費者側の資金需要に変化が無ければ、本来は別の貸出主体が、代わりに資金を供給するはずである。ところが、同じ時期の銀行による消費性貸出残高(住宅ローンを除く)を見ると、穴をふさぐどころか、徐々に残高を減らしているのがわかる。すなわち銀行は、消費者金融業態の貸出の減少をカバーする資金供給主体にはなりえなかったのである。
こうして消えた6兆円、消費者にとって「あぶく銭」としての使い道であれば、貸し手の減少とともに需要も減少するのであろうが、年間個人消費の2%にも相当する金額は、そう割り切るにはいささか大き過ぎる感が否めない。本当に資金を必要とする消費者の頼る先が「ヤミ金」しか残されていないのであれば、貸金業法第一条「資金需要者等の利益の保護」のカンバンが泣く。借り手の保護のためには、取引の相手方たる健全な貸し手の育成が必要不可欠のはずだが、銀行による消費性貸出残高の減少は、貸し手不在の消費者金融市場の現状を如実に物語る。
(尾藤 剛)
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