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バックナンバー【今月のトピック】

2011年8月度(2011/10/31発行) 貸出先の「粘り」とデフォルト率の動向


 RDB企業デフォルト率は、銀行貸出先のうち「3ヶ月以上の延滞発生、または破綻懸念先以下への債務者区分変更」をもってデフォルト先の定義としているが、これらデフォルト先のうち、特に3ヶ月以上の延滞先に注目すると、これに先立って最初の延滞発生のタイミングが必ず存在している。

 通常の企業であれば、返済が一度遅れたからといってすぐにバンザイするわけではなく、約定通りの返済状況に戻そうと懸命に努力するはずで、銀行側もこれを最大限支援すべく、一度の延滞だけで「デフォルト」とはしないのが通常である。従って、万策尽きて3ヶ月以上の延滞に至る場合も、かかる努力の結果として、最初の延滞時点からは相応のタイムラグが生じるはずである。しかしながら、あまりに急激な業績の悪化や、経済環境の激変局面では、こうしたタイムラグを稼ぐ「粘り」の効かない状況も起こりうる。

 図は、毎月のデフォルト先について、最初の延滞発生から実際のデフォルト時点までのタイムラグ(月数)の平均値を算出し、デフォルト率と比較したものであり、両者が概ね逆相関の関係にあるのがわかる。ひところ、急激に業況の悪化する「突然のデフォルト先」の増加が問題視されていたが、2008年から2009年にかけては、まさに貸出先にとって「粘り」の効かない時期だったことがわかる。一方、足元ではこのタイムラグが拡大傾向にあり、逆にデフォルト率は低下している。デフォルト率の先行きを見通すうえでは、次に貸出先の「粘り」が効かなくなるタイミングに注意を払うべきだが、これは、貸出の現場こそが敏感に反応できる性質の情報でもある。高いアンテナと鋭い感覚をもって、現場から変化の兆候を捉えたい局面と言えよう。

(尾藤 剛)

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