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バックナンバー【今月のトピック】

2011年7月度(2011/9/30発行) 被災地におけるデフォルト率の動向


 東日本大震災の発生から半年が経過した。地震と津波による直接的な被害、そして電力の問題から、国内経済全体に対する震災のインパクトは極めて甚大なものとなることが当初は懸念されていたが、これまでの経済指標の動きを見る限り、2008年当時のようなスパイラル的な経済危機の発生は、ひとまず回避された観がある。

 「RDB企業デフォルト率」においても、震災以降で目立った上昇はなく、全国レベルの議論としては上記の見方と大きな違いはない。しかしながら、被災地に限ってデフォルト率の動向を見ると、様相は大きく異なっているのがわかる。図は、特に被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県(以下、被災地という)のデータに絞って集計したデフォルト率を示している。直近(2011年7月)のデフォルト率は、全国の2.22%に対して、被災地では4.28%となっており、震災直前(2011年2月)と比較すると、全国ではこの間に0.17%p改善しているのに対し、被災地では逆に1.34%pの悪化を示している。中でも製造業では、2月の2.78%から6月には6.29%へと、実に3.51%pも上昇しており、震災当初から懸念されていたサプライチェーンの断絶による悪影響は、デフォルト率の動きからも明らかである。なお、建設業のように数値の上での変化が殆ど見られない業種もあり、震災の影響は業種ごとに必ずしも一様では無いようだ。

 弊社データベースの対象には、被災地を本店所在地とする銀行が含まれていないことから、この集計値を見る上で、母集団の網羅性についてはある程度割り引いて考慮する必要があるものの、被災地においてはデフォルト率が上昇トレンドに入った可能性も排除できないという事実は、大いに憂慮すべき問題であろう。事態の悪化を食い止め、一刻も早く被災地の復興を促すためには、何よりスピード感のある政策対応が必要とされている。

(尾藤 剛)

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