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バックナンバー【今月のトピック】

2011年6月度(2011/8/31発行) 財政危機を支える預金者の「我慢」


 格付会社のムーディーズは8月24日、日本政府の信用格付をAa3に一段階引き下げることを発表した。また、ユーロ諸国の財政問題、S&Pによる米国の格下げなど、ここ最近、先進国そのものの信用リスクに注目したニュースが目立つ。背景には、積極的な財政出動と、リセッションへの懸念という先進国共通の問題があるようだ。
 日本の財政状況も更に深刻化しており、本年3月末の国債残高は719兆円、名目GDP対比で1.5倍強の水準にある。冒頭の格下げを見るまでもなく、日本の財政は長らく危機にあると言われているが、そもそも「財政危機」を合言葉に消費税が引き上げられたのは1997年であり、今や危機は常態と化した感すらある。この10年間で国債残高は381兆円から719兆円へと約2倍に増えたが、この危機を先送りしたのが銀行と郵便貯金の伸びである(上図)。中でも銀行は近年の伸びが顕著であり、ここ3年間で81兆円から155兆円へと残高を倍増させている。この裏付けとなったのが銀行の余資、すなわち預金と貸出金の差額である純預金残高の伸びである(下図)。
 さて、この純預金のオーナーとは、すなわち一般の預金者である。これまで財政危機を先送りできたのも、デフレと低金利に対する預金者の「我慢」のおかげと言えよう。直近の純預金残高174兆円に対して、銀行の国債残高は155兆円まで迫っているが、この数字が逆転するときこそ預金者の我慢の限界であり、本当の危機が到来するときであろう。 

(尾藤 剛)

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