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バックナンバー【今月のトピック】

2011年5月度(2011/7/29発行) 中京圏に見る中小・零細企業の苦境


 少し前の話になるが、トヨタ自動車社長による「日本でのモノづくりの限界」発言は、日本を代表する製造業トップによる経済政策への強い警鐘として各方面に衝撃を与えた。そしてこの発言を裏付けるかのように、トヨタ自動車のおひざ元である中京圏では、デフォルト率の動向に異変が見られている。
 直近2011年5月のデフォルト率は全国で2.31%であり、ここ3ヶ月ほど横ばいとはいえ、2009年3月をピークとする低下局面が完全に転換したわけではない。一方でこの間、全国の傾向とは逆に、一貫してデフォルト率が上昇していたのが中京圏である。右図の実線は、2008年3月以降の全国と中京圏におけるデフォルト率の推移を示しているが、ちょうどリーマンショックに見舞われた2008年秋を起点に、両者が鏡に写したような対照的な動きを見せているのがわかる。直近の中京圏のデフォルト率は2.95%であったが、これは首都圏、関西圏などと比べても大幅に高い水準にある。
 これについてもう少し中身を詳しく見るために、企業規模別に分けてデフォルト率の推移を示したのが図の点線であるが、これによると、売上高1億円未満のいわゆる中小・零細企業において、直近1年間程度でデフォルト率が顕著に上昇していたのがわかる。規模の小さい企業のデフォルト率が高いのは全国的にも言えることではあるが、直近でここまで急上昇している地域は中京圏をおいてほかにない。冒頭の発言について付言すれば、日本のモノづくりを底辺で支えるのがこうした中小・零細企業である。モノづくりの総本山で見られる底辺の揺らぎは、震災や電力の問題以前に、中小・零細企業を襲った不況の深刻さと、政策面の無策に起因する、いわば中小・零細企業の「限界」を示しているのかもしれない。

(尾藤 剛)

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