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バックナンバー【今月のトピック】

2011年4月度(2011/6/30発行) 就活という名の長期投資


 6月18日付の日本経済新聞では「新入社員の74%『終身雇用を望む』」との記事で、昨今の新卒者の就活に対するいわゆる安定志向が調査結果として示された。学生の多くが就職先の第一目標に大企業を据えるのは、今も昔も変わらぬ光景だが、これは、安定した環境の下に堅実な社会人生活を送りたいという、一種の長期投資家的な価値判断にもとづく自然な結果であろう。こうした傾向は「就職氷河期」などと称される先行き不透明な経済環境の時期ほど顕著であり、今般の震災以降は、こうした傾向にも一段と拍車がかかるものと見られる。
 かくいう筆者もかつて、そうした安定志向の学生の一人であったが、ここに長期投資家のパフォーマンスを測る一つの材料を見ることにしたい。右表は、筆者が大学3年生を迎える直前と、本年3月末時点との、東証の時価総額上位20社を比較したものである。当時のままランクに残るのは、トヨタ、NTT、パナソニック(松下)の3社のみで、他は顔ぶれが一新されている。半数を占めていた大手銀行はすべてその名を変え、今では3行がランクに残るのみである。
 大企業の定義は様々であるが、いまの大企業が十数年を経て変わらぬ姿であり続ける保証がどこにもないのは、この表を見ても明らかであろう。ましてや「終身」などという更に長期の投資を考えるならば、「いま」の大企業の名前にこだわることにどれほどの意味があろうか。学生のみなさまへ、かつて長期投資家として銀行を選んだ者からの、ささやかなアドバイスである。

 (尾藤 剛)

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