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バックナンバー【今月のトピック】

2011年3月度(2011/5/31発行) 関東大震災が実体経済に与えたインパクト


 東日本大震災の発生から2か月余りが経過した。今月発表の2010年3月期のRDB企業デフォルト率は、震災後の期間を含む初めての数値として注目されたが、結果は前月比マイナスであり、この未曾有の大災害の影響が目に見えて数値に表れるには至っていない。今回は過去のデータに学ぶという弊社の基本姿勢をもとに、今後の景気動向を考えてみることにしたい。

 ここでは参照事例として1923年9月1日に発生した関東大震災を取り上げる。震災が実体経済に与えたインパクトを見るために、当時の実質GDP成長率の動きに注目した(図)。これによると、前年1922年の▲0.4%(暦年前年比、以下同)に対して、1923年は0.0%の横ばい、翌1924年以降は+2.8%、+4.1%と回復に向かっている。被害総額が当時のGDPの4割にのぼったとされる関東大震災にあっても、当時のGDPはマイナス成長にはなっていないが、その後の回復ペースも大戦特需期のような急激なものではなかったのである。

 1923年のGDP成長率0.0%という数値は、当時の平均値+4.0%をちょうど4%p押し下げた水準だが、今回の震災が同等のインパクトを持つものと仮定すると、直近10年間の平均値+0.7%に対して▲3.3%という数値が一つの目安となる。図の灰色の線は、比較可能性を考慮して7月から6月を1年間として集計した直近の実質GDP成長率を示している。▲3.3%となるのは2010年7月から2011年6月の1年間であるが、これは、2011年4~6月期のGDP成長率が前期比▲4%程度という非常に厳しい水準に落ち込むことを意味する。その後は▲0.5%(2011/7~2012/6)、+0.8%(2012/7~2013/6)となり、これは四半期ベースでプラスに転じるのが年明け以降となるような、かなり緩慢な回復ペースの想定となる。             

(尾藤 剛)

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