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バックナンバー【今月のトピック】

2011年2月度(2011/4/28発行) 進捗が滞る中小企業の経営再建計画


 2008年に採用された中小企業支援策の一つに、金融検査マニュアルの一部改定による不良債権認定基準の緩和が挙げられる。対象となった中小企業は、借入の返済条件の緩和を受けても、要管理債権という一種の不良債権認定を避けられることとなり、当時のパニック的な金融収縮の状況下においては、これによって資金繰りに何とか目途をつけたという企業も多かったものと思われる。このとき条件とされたのが、一年以内に経営改善計画を策定する義務や、経営改善計画の進捗に応じて後日銀行が信用状態を評価し直すという、改善猶予期間の提示であった。

 図は、当時のデフォルト率の推移について、デフォルト定義を要管理先以下、破綻懸念先以下、実質破綻先以下と変化させた場合の水準を比較したもので、デフォルト定義の違いによって、それぞれのトレンドが変化するタイミングも微妙に異なるのがわかる。最初に低下に転じたのは要管理先基準のデフォルト率だが、これはマニュアル改定の対象が要管理債権の定義自体に関係していたからに他ならない。そして最近では、実質破綻先基準の数値が下がり続ける一方で、要管理先や破綻懸念先を基準とする数値には下げ止まりの傾向が見られる。これは、先の改定にて要管理債権から外れた「純粋な条件緩和債権」が再評価を受けることで、多くの中小企業があらためて要管理先や破綻懸念先として再認定されるケースの増加を意味する。

 金融円滑化法を含む各種の中小企業支援策は、企業側の将来的な業況改善を大前提とするが、目下のデフォルト率の動向は、これらの貸出先が十分な経営改善計画の策定や実現に至らず、時間的猶予を使い果たしている現状を示唆している。震災の影響以前にデフォルト率に潜在的な上昇圧力が存在している点は、先行きを見る上で大きな懸念材料と言えよう。

(尾藤 剛)

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