予兆・変調検知モデル
~パートナーシップ・バンキングの確立~
2026年5月、企業の事業の継続および成長発展を支え、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする「事業性融資推進法」が施行されました。金融庁は、事業性融資において特に重要となるのが事業者と金融機関の間の「信頼関係の構築」であるとし、具体的な考え方を公表しています。
それでは金融機関はどのようにして、企業との「信頼関係の構築」を実現していけばよいのでしょうか。
かつての中小企業金融においては、メインバンク制のもと、特定の金融機関が長期的な関係を通じて企業の実態を深く把握し、継続的な支援を行う枠組みが機能していました。しかし、「失われた30年」の金融環境の中で多数行取引が一般化し、金融機関と企業との関係は広く浅いものへと変質しました。その結果、個々の金融機関が把握できる情報の質と量は大きく低下しています。
加えて、少子高齢化に伴う人材の減少や営業現場の高齢化により、1人当たりの担当先数は増加し、十分な対話やモニタリングに割ける時間は大きく制約されています。さらに深刻なのは、こうした環境の中で、企業の実態を捉え、その変化を見極める現場の《与信管理力》や《事業金融力》そのものが低下している点です。
こうした状況を踏まえると、従来のように与信管理を現場の経験や力量に依存する運営は、もはや成立しません。ひとたび失われた力を、現場の自律的な取組みだけで復元することは不可能です。
そもそも、格付業務や融資審査に比べ、現場の与信管理の状況は審査部門等の本部から最も遠い領域にあります。個々の取引先との対話の内容やリレーションの構築状況を、網羅的かつ継続的に把握・管理することは、従来の手法では不可能でした。
RDB予兆・変調検知モデルは、これまで本部では把握し得なかった現場の与信管理の実態を、可視化・定量化するためのソリューションです。
本モデルは、営業現場が日々作成している面談記録(テキストデータ)を解析し、そこに内在する信用リスクの変化、すなわち「予兆・変調」を評価します。年に一度しか更新されない財務情報では捉えられない業況の微細な変化を、高い判別力とポイント・イン・タイム性で捕捉します。
重要なのは、本モデルが単なるリスク検知にとどまらない点です。本モデルの評価結果を、実際に付与された格付・債務者区分と対比することで、取引先との関係の深度や与信管理の実態が浮き彫りにすることができます。
例えば、格付が相対的に低位である一方で、本モデルの評価が高い先では、財務上の懸念があるにもかかわらず、業績に関するヒアリング等がほとんど実施されていない実態が確認されています。一方で、高格付であっても本モデルの評価が低い先では、財務数値には表れていない後発リスクが既に発生しているにもかかわらず、それが格付に反映されていないケースが多数確認されています。
このように、モデルによって可視化されたギャップを起点として、本部は重点的にフォローすべき先や改善を要する領域を特定し、現場に対する指導やリソース配分を最適化することが可能となります。従来は属人的かつ断片的にしか把握できなかった与信管理の実態を、組織として一元的に管理し得る枠組みへと転換できるのです。
RDB予兆・変調検知モデルは、事業性融資の一丁目一番である「信頼関係の構築」を理念から実務へと引き上げる役割を果たします。これにより、金融機関はリスクの早期捕捉と適時対応を組織的に実現し、与信業務の質と効率の双方を高めていくことが可能となるのです。
