成長性評価モデル

~将来キャッシュフローに基づく融資慣行の確立~

2026年5月、企業の事業の継続および成長発展を支え、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする「事業性融資推進法」が施行されました。事業性融資とは、「事業の将来性に基づく融資」や「成長可能性に基づく融資」などの総称です。まず、その基本的な構造を改めて確認します。

企業が事業を拡大する際には、生産設備の増設や研究開発費の増加といった先行投資により、投資キャッシュフローや営業キャッシュフローは一時的にマイナスとなります。その不足分を借入金等で賄うため、財務キャッシュフローはプラスとなります。その後、収益力の向上に伴い営業キャッシュフローをプラスへ転換し、最終的に財務キャッシュフローを返済局面へと移行させていく。この一連の流れが企業成長の基本パターンであり、それを支えることが金融機関の社会的使命です。

それでは、なぜ日本の金融機関は事業性融資を十分に遂行できなくなったのでしょうか。いわゆる「失われた30年」は、事業性融資の本質が見失われてきた時代であったとも言えます。リスク管理を最優先とする金融行政が金融機関の行動を委縮させたとの認識のもと、2019年には金融検査マニュアルが廃止されました。しかし、実務は本質的に変わらず、今回の法制定に至っています。

 問題の核心にあるのが現行の格付制度です。格付評価に広く用いられているデフォルト判別モデルは、短期のデフォルトリスク評価を目的とするものであり、投資キャッシュフローや営業キャッシュフローがマイナスとなる成長途上企業は低評価となりやすい構造にあります。格付制度は金融機関の融資行動を規定する根幹的枠組みであり、それが成長企業への資金供給を阻害するものである限り、事業金融の促進も国民経済の持続的発展も期待できません。

RDB成長性評価モデルは、こうした構造的課題に対する解決策として開発したものです。本モデルは、財務情報を単なる過去実績としてではなく、事業の成長過程におけるキャッシュフロー構造の変化として捉え、将来の収益力とキャッシュ創出力を評価します。

デフォルト判別モデルとは評価特性が大きく異なります。例えば成長過程の企業では、所要運転資金の増加により営業キャッシュフローが一時的にマイナスになることがあります。従来モデルはこれを回収遅延や在庫滞留といったリスク要因として評価を引き下げますが、本モデルは事業拡大の兆候として捉え、将来のキャッシュフロー創出力の観点から評価します。

重要なのは、両者のギャップが可視化されることで、顧客との対話や追加検証が促される点にあります。事業の実態や経営者の方針、将来見通しを踏まえて検証を行うことで、情報の非対称性を解消し、より実態に即した判断へと導きます。

金融庁も、形式的には要注意先・破綻懸念先となる場合であっても、事業の将来性からキャッシュフローによる返済が見込まれる場合には、正常先・要注意先とすることが合理的であるとしています。

RDB成長性評価モデルは、将来キャッシュフローを見極めるための新たな視座を提供し、金融機関と企業との対話を深化させます。足元の財務基盤だけでは評価しきれない成長企業に対し、適切な資金供給と事業支援を実現する。そのための実務的なソリューションこそが、本モデルに他なりません。