粉飾決算問題
~粉飾決算に翻弄されない確かな眼の確立に向けて~
近年、粉飾決算に起因する企業破綻は増加しており、その手口も多様化・巧妙化しています。これに伴い、粉飾を見抜けなかった金融機関に対する批判も高まり、金融庁も審査・リスク管理態勢の高度化を強く求めています。
そもそも中小企業には従わなければならない会計基準も開示制度も整備されていません。粉飾決算を抑止する社会的インフラが存在しないのです。このため、個々の金融機関の努力のみで粉飾リスクに対応するには限界があります。すなわち、粉飾決算は個別企業のモラルの欠如だけに帰すべき問題ではなく、中小企業金融全体の構造的課題といえます。
一方で、企業の実態を理解し、その本質を見極めるという、本来銀行員に求められる《事業金融力》は明らかに低下しています。形式的な財務分析や画一的な審査プロセスに依存する中で、企業と向き合い、納得のいくまで考え抜く力は徐々に失われつつあります。
こうした環境下においては、粉飾決算に翻弄されない確かな眼、すなわち《審眼融資力》を磨くことが何よりも重要です。RDBは、この課題に対し、志を同じくする約20の会員の皆さまと《審眼融資研究会》を設立し、運営しています。
本研究会では、RDBの人財基盤・会員基盤・データ基盤という三位一体の強みを活かし、三つの課題に取り組んでいます。
一つ目は、《RDB粉飾決算検知モデル》の構築です。本モデルは、粉飾決算に起因してデフォルトに至った企業の特性を、長期にわたる財務情報から抽出する機械学習モデルです。すでに構築は完了しており、現在はモデルの判別結果の解釈性向上にむけた研究を継続しています。
二つ目は、適正かつ公正な決算書作成を実現する社会インフラ、すなわち“Fairness Financials Platform(FFP)”の構築です。近年、異なる内容の決算書を複数作成し、金融機関毎に使い分ける行為が顕在化し、世間の注目を集めています。こうした事案において、RDB事業法人データベースに、複数の会員から同一の債務者について異なる内容の財務データが拠出されているケースが確認されています。すなわち、同データベースを活用することで、決算情報の整合性を検証し、こうした不適切な行為の抑止に資することが可能となります。FFPの中核技術については、既に特許を取得しております。しかしながら、FFPの実現には、例えば貸出先企業に対する守秘義務上のリスクや顧客説明に係るトラブルへの対処等、越えなければならないハードルが数多く存在します。それらを一つひとつ乗り越え、実現に向けた取組みを着実に進めています。
三つ目は、粉飾決算先に関する知見の高度化、すなわち《審眼融資力》の向上に向けた取組みです。本研究会では、一つ目、二つ目の取組みを通じて得られた分析結果を様々な切り口から提示し、その内容について徹底的な議論を重ねています。また、《RDB粉飾決算検知モデル》や《FFP》の評価結果を、融資現場でどのように活用するか、どのような業務プロセスや判断基準に落とし込むべきかといった領域にまで踏み込み、実務への具体的な実装を見据えた検討を行っています。
粉飾決算への対応は、単なるリスク管理の強化にとどまりません。金融機関が確かな眼を持ち、企業の実態に基づいて評価を行うことで、不適切な会計行動そのものの抑止につながり、中小企業金融の健全性を支える基盤が形成されます。
RDBは、金融機関の皆さまの《審眼融資力》の涵養を支援し、粉飾決算に翻弄されない《事業金融》の実現に貢献していきます。
